1.

雨音は嫌いだ。頭が痛くなる。
よって、降り始めた雨に気が付いてしまった今の気分は最悪も最悪。

ヘッドホンを外したのが間違いだった。
今の今まで僕を守っていた、シャカシャカと漏れる音に腹が立ってそれを蹴飛ばした。
雨音は一度気が付くと無視できない。

「      」

柔らかな冷たい膜に包まれてズキズキ痛む頭には、なぜかいつも深い森が浮かんだ。
針葉樹の黒い森、濃いグレイの雲、雨音、
そして、生物の温かさを微塵も感じさせない木の下で、泣いている少年。
長い髪も汚れた服も小さな身体も、無防備に、
何にも守られないで、ひっそりと、誰にも届かないように泣いている彼の声が。

僕には聞こえてしまう。誰にも届かないはずなのに。

サアアァアァ

どうしてだろう、この音は簡単に入り込んできて僕を満たすのだ。
僕は冷たい床にしゃがみ込んでしまう。
このときばかりは、音楽さえ怖くなる。消えてしまう。


雨音は嫌いだ。泣きたくなるから。


















02. バスルーム













03. 首筋













04. 煙草













05. におい













06. 手首