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蜜は煙草とジャンク・フードを持って帰ってきた。
「食べる?」
蜜が片手で差し出したチェリーパイを受け取って、ハタはソファに座りなおした。
エア・コンディションを快適にする音が沈殿した部屋に紙の擦れる音が舞い上がる。
光を遮る閉め切ったカーテンと一緒に空間を一層閉鎖させている。
「この前のあなたの質問だけれど」
蜜が唐突に言った。ハタは顔を上げる。
蜜は指についたシロップを気にしながら「少し考えてみたの。」と言った。
「多分、魚みたいな風に、だと思うわ。」
彼は犬や猫みたいに汚くないし、かと言って爬虫類のようにグロテスクでもないし鳥みたいにやかましくもない。曇りなく磨かれたガラスの四角いケースの中の、快適な温度と清潔さを保つ水に満たされた半透明の世界で泳ぐ魚。
硬い空気の中で息苦しそうに苦い呼吸を続けている彼は本来はそういうものなのだ。
「――――。」
「悪くないでしょう?」
「……そうだね。悪くはない」
思い切り下品なショッキングピンクを見つめながら、彼は素っ気無く言った。部屋には相変わらずエア・コンディションを快適にする音と光を遮るカーテン。
この部屋を閉鎖させる膜は無機的な動作で分厚くなっていっている。
「いつまで飼うつもり?」
「いつって……私はいつまででもいいわよ。ア。」
「コーヒーを買い忘れた」。蜜はそう言って立ち上がった。
「仕方ないわね。外に出ましょう」
蜜とハタは喫茶店で食事をしてコーヒーを飲んだ。店内には古典的で荘厳な音楽が流れていて、ハタはおかげで家具の音楽を忘れた。